デフラグビーに関する基礎調査研究
-東海地区の高等学校を対象に-
寺田泰人(名古屋経済大学短期大学部)
小中一輝(日本聴覚障害者ラグビー連盟)
金子香織(日本聴覚障害者ラグビー連盟)
寺田恭子(名古屋短期大学)
キーワード:デフラグビー、聴覚障害者、活動実態
○研究の目的
デフラグビーは、1991年にニュージーランドでデフラグビー協会が設立され、日本では1997年に日本聴覚障害者ラグビークラブが立ち上がった。2002年には第1回デフラグビー世界大会が開催され、日本代表チームも出場している。その後も活動の輪を広げているものの、デフラグビーチームの存在あるいはデフラグビーそのものの認知度は高いとは言いがたく、選手数は横ばい状態である。
そこで今回は、高等学校に通う生徒の聴覚障害者および聴覚に障害を持つラグビープレイヤーの実態について把握し、デフラグビー普及のための具体的な方法を検討することを目的とする。
○研究の方法
調査内容:高等学校における聴覚に障害を持つ生徒の把握および聴覚障害者でラグビーを行なっている生徒の実態、またラグビー指導者のデフラグビーに関する知識について
調査対象:東海3県(愛知・岐阜・三重)のラグビー部のある高等学校104校
調査期間:2007年11月26日~12月20日
調査方法:郵送法
回答数 :68校(回収率65,4%)
○結果
アンケートの回収率は65.4%(68校)、回答者は全員が男性であった。またラグビー部指導者のうち54.4%が保健体育教員であり、ラグビーが専門種目の指導者は91%であった。今までに聴覚に障害のある生徒に体育の授業あるいはラグビーを教えたことのある指導者はそれぞれ32.9%、10.5%であった。ただし、現在聴覚障害のある生徒を教えていると回答した指導者はそれぞれ6%、1.5%と低かった。また、指導者自身がデフラグビーを知っているかという質問では、「よく知っている」5.9%、「知っている」57.4%、「あまり知らない」20.6%、「全く知らない」16.2%という結果であった。「よく知っている」および「知っている」と回答した指導者は、ラグビーマガジンなどラグビー情報誌で知識を得たり、デフラグビーについて書かれた本を読んでという回答がほとんどであり、実際にデフラグビーを観たり、体験したというのはほんの一握りであった。デフラグビーに関する情報はラグビー部に所属する生徒に必要かという質問では、13.4%の指導者が「とても必要」と回答し、「必要である」という回答とあわせると71.6%となった。一方、ラグビー部以外の生徒への情報提供に関しては教育的立場から必要だと答える指導者が64.1%いる反面、「あまり必要でない」という回答も34.3 %であった。なお「全く必要ない」という回答はなかった。
○考察および今後の課題
結果を見る限り高等学校でラグビー指導に関わっている教員(指導者)はおおむねデフラグビーについてその存在については認識しているものの、実際に聴覚障害を持つ選手にラグビーを指導したという経験を有するものはごく少数でしかない。さらに、ラグビーというスポーツの発展を考えた上で、あなたが高校のラグビー指導(健常者を対象とした部活動)以外に興味が持てるものはなにかという質問で、「デフラグビー」を挙げた指導者数は19.7%と少なかった。よって今後の課題の一つとして、デフラグビーの存在を認めるだけではなく、興味関心を持ってデフラグビーに関われる指導者へのアプローチ方法が挙げられる。なお自由記述では、今回のアンケートで初めてデフラグビーの存在を知ったという指導者もおり、デフラグビーの存在をアピールできたという点でアンケート調査自体が役立ったと言える。