幼児の体力づくりへの取り組みについて

幼児の体力づくりへの取り組みについて
~ラグビー遊びをとおして~

村田トオル(帝塚山大学)
池上勝義(有限会社トップコーポレーション)
灘英世(関西大学)
溝畑寛治(関西大学)

キーワード:子ども、体力、取り組み、ラグビー遊び

○はじめに
子どもの体力低下については、1985年ごろより始まり、近年では「運動する子」「運動しない子」の”二極化現象”が大きな社会的問題となっている。子どもの体力低下問題はもはや運動能力という狭い視点だけでなく、生活習慣全般に及ぼすものである。本稿では、いち早く子ども達の発育発達に積極的な取り組みを実施している保育園を例にあげつつ、幼児向けに簡素化したラグビーをとおして、幼児の体力づくりについて考えてみたい。

○取り組み
 ラグビーは、身体接触が許されているスポーツである。そのために生じるプレー事象は様々であり、あらゆる身体技法により対応しなければならない。さらに、”紳士のスポーツ”と呼ばれるように、いかに身体接触が許されていても、危険な行為に対しては、その種類により反則が課せられる。また”ノーサイドの精神”とも表現されるように、ひとたび試合終了となれば、握手をし、お互いの健闘を讃えあう。このようにラグビーは、人格教育的な側面も備えているスポーツである。
有限会社トップコーポレーションでは、「子どもの強いからだと心を育て、さらにチームでプレーすることにより団結力を養う」というねらいで、体育指導の業務委託を受けている私立保育園において「ラグビー遊び」という名称で指導計画に取り入れている。また、「ラグビー遊び」を取り入れている複数の保育園に呼びかけ、「保育園同士の交流や日ごろの成果発表のため」をねらいとした「保育園親善ラグビー大会」を1995年より毎年1回開催している。さらに、「ラグビー遊び」導入における体力面を確認するために独自の測定法により体力テストを実施した。

○結果および考察
(1)「ラグビー遊び」導入による園児の行動変容
 保育士の観察によると、当初は、見ているだけの園児が練習に参加したり、何事にも消極的な園児が進んで取り組むようになったり、さらに礼儀正しくなり、友達を思いやるなど明らかにクラスが一体化したという実感を持ったという。
(2)「ラグビー遊び」導入による園児の体力における変化
一般に体力は向上する傾向にあった。しかしながら、ラグビー遊びによるものか、自然な発育発達によるものかまでは言及できなかった。だが保育士の観察によれば、「何度でもくりかえしたり」「動きを工夫したり」という自発的な行動がみられたところから推察すると、これらの行動はトレーニングの5原則である「反復性」および「漸進性」の原則を満たしているともいえよう。さらに基本運動動作の要素が入っていることによる「全面性」の原則も満たしているといえよう。したがって、さらに継続的な実施により向上は十分期待できるものと考えられる。

○まとめ
園における子どもの様子から、「ラグビー遊び」を取り入れてからは、明らかに意欲や対人関係に対しては好影響をおよぼしたといえよう。体力についても、直接的な関与はなかったものの、運動への意欲喚起をおよぼす間接的な影響があったものと推察される。したがって、身体接触というラグビー特有の動きを簡素化し、子どもが興味をひくよう工夫したルールによる「ラグビー遊び」は、幼児期における取り組みとしては、有効であると示唆される。