鈴木 道男 (どんぐりラグビークラブ)
キーワード レフリング、安全、エンジョイラグビー、生涯スポーツ
【緒言】
激しいコンタクトプレーのあるラグビーを生涯スポーツとして普及させるためには、「安全」かつ「楽しく」という理念が大切である。またゲームを進行するためには、安全に配慮した芝生のグランド設備はもちろんだが、対戦チームアレンジ、レフリング運用の技術面を充実させなければならない。筆者のレフリング経験をもとに、「エンジョイレフリング」について提案する。
【目的】
エンジョイレフリングとは、幅広い年齢構成、いろいろなスキルの選手で構成されたチームが、勝敗よりもプレー、ラグビーのエッセンスそのものを楽しむことをサポートするレフリング技術である。「安全に楽しく」というコンセプトのゲームをコントロールするのは、「エンジョイレフリング」である。これに対してラグビー協会などが主催する大会、リーグ戦などのゲームで、同じ年齢構成、スキル、経験レベルのチーム同士が競技として勝敗を争うものはコンテストラグビーと位置づけされ、レフリングは競技規則を厳密に運用する「コンテストレフリング」として区別される。エンジョイレフリングを理解し、円滑な運用技術を研究し普及させることは、新たなラグビーファンを獲得し、生涯スポーツ発展に大きく寄与するものである。
【方法】
どんぐりラグビークラブ主催「関西シニアラグビーフェスティバル」シニアゲーム、クラブチーム交流試合、その他、レフリー担当などで適用した。
《ゲームの目的設定》
最初にゲームコンセプトがエンジョイラグビーかコンテストラグビーか、参加者に対して明確にしておくことが大切である。
《対戦アレンジ》
事前調整、確認は、重要である。年令の調整 出来るだけ年齢を合わせる。筋力パワーなどは維持できても、反射神経、反応速度などは加齢とともに鈍化する。キックオフから5分程度で対戦チームのレベルを判断、ゲーム中も選手の動きの観察を続けていく。レベルに差があり、進行がワンサイドゲームとなる場合は、劣勢側のモチベーションが下がり、最終的には双方が楽しむことは出来ない。レフリングのゲームコントロールによってノーサイドまで両者ともモチベーションを維持する必要がある。選手とのコミュニケーション、判定が微妙な場面でのルール適用吹き分けなどで試合コントロールする。
- (モチベーション) 笛、コールは穏やかに行い、試合中に選手の足が止まらないように配慮する。
- (スクラム) 場合によりノンコンテストを推奨、ノープッシュなど柔軟に適用、安全に配慮し、体力を温存しながらゲームを楽しむ
- (ラック・モール) 無用なオフサイド、倒れ込み、などの反則を防止するために整理を早く行う。
- (ラインオフサイド) 瞬発力のある若い選手の飛び出すディフェンスを制限、コントロールする。
- (アドバンテージ) スキルの高い選手、若いチームのアドバンテージルール適用を制限する。
- (グレーゾーンの判定) どちらの側の反則かわからないグレーゾーンの判定時のペナルティなど適用は、モチベーションの落ちたほうに有利に判定して、最後までゲームを盛り上げる。
- (トライ) どちらか一方が、ノートライとなるピリオドがないようにコントロールすることを推奨する。 試合後のレセプションを盛り上げるための演出である。
- (ゲームピリオド) それぞれ一試合と考えるレフリングをする。選手編成は一期一会、その1ピリオドだけ出場という場合もあるので、すべてのピリオドごとでゲームが完結することを目指す。集中力を維持するためには、15分程度のショートピリオド進行を推奨する。
【結果と考察】
年齢やレベルに差があるゲームにエンジョイレフリングを適用することで、最後までゲームを楽しむことができた。コントロールするレフリーは、選手のゲーム心理を読みながらリードする。これはセンスと豊かな経験が必要であり、これらをアドバイスできるレフリーコーチを養成する。参加者がゲーム中に、エンジョイレフリングを意識することにより、ラグビーがより安全で、より楽しいゲーム進行が可能となる。
【まとめ】
エンジョイレフリングのゲームコントロールは、「安全に楽しく」エンジョイラグビーを盛り上げるのには必須である。ノウハウを蓄積し、公開し、普及することは、ラグビーを楽しむオプションを増やし、生涯スポーツとして新たな参加者を呼び込める効果がある。選手構成などギャップのあるゲームにエンジョイレフリングを適用すると、ゲームが盛り上がり、生涯スポーツとして高い満足感が得られ、参加選手や観衆も一緒に楽しむことができる。