サッカー・ラグビーの相対的年齢効果による差異について

桑田 大輔(生駒少年ラグビークラブ)

キーワード:相対的年齢効果、子ども、育成システム

【はじめに】
★【FIFA(国際フットボール連盟)創立100周年記念出版 フットボールの歴史】より、『口頭で伝えられているぐらいだったルールが初めて書き留められたのは1846年、パブリックスクールのラグビー校においてであった』『少なくとも1914年まではラグビーが冬のナンバーワンスポーツの地位を確保していた』★【500年前のラグビーから学ぶ、ラグビーの起源、そして日本の進むべき道】より、『1845年、あまり詳細なことには言及せず、概略をまとめたものにすぎないが、ラグビー校式フットボールのルールブックが完成する』とある事から、1845~6年に、初めてフットボール競技規則の原案が、ラグビー校で明文化された。同じ起源のルールから始まった、サッカー・ラグビーの育成システムを常に比較対照してきた。

【目 的】
 子ども達のサッカー・ラグビーの大会ガイドライン、育成システムには、大きな違いがあり、その他にも、日本の男子競技スポーツの多くと、学校教育に、4~6月生まれ(春生まれ)のトップアスリート(生徒)の人数が多く、1~3月生まれ(早生まれ・冬生まれ)に、少ない相対的年齢効果の研究データにも差異があるサッカー・ラグビーの相対的年齢効果による差異を多角的に検証する事で、子ども達が、身体的・精神的に素質に応じた成長を促進するような、育成システム・大会ガイドラインの構築がでると考えた       

【方法】
 サッカー・ラグビー・その他のトップアスリート・各年代の生まれ月を集計し、外国選手を除く・人口動態統計・日数割合も考慮した実数(デモグラフィック変数)に近い月別出生数表を作成する。多数の月別出生数表、各年代のスポーツ競技人口の推移と競技開始年齢・ポジションを調査し参照する

【結果】
サッカーJリーガーの春生まれと早生まれ(9ヶ月の月齢差・成長差)のトップアスリートの割合が、約3:1となる。子ども達の成長差を、約6年と考えると、春生まれの早熟児と晩熟児(72ヶ月の成長差・月齢差)では、24:1となる。更に、春生まれの早熟児と早生まれの晩熟児では、上記の割合から、72:1となる。
 Jリーガーになれる身体的・精神的な素質があるのに、月齢差や成長差によって72倍の差が発生する。これは、Jリーガーが600人いた場合、身体的・精神的に素質があってJリーガーになる可能性のある選手は、20人以下ということだ
 ラグビートップリーガーの生まれ月による年齢別月別出生数表に大きな差異は無く、相対的年齢効果の差異は小さい。ラグビーは、小学生以下の年代から競技開始しても、中学生・高校生から始めても、トップ選手になれる。先天的な要因の割合が多いことで、構成される競技スポーツのために、相対的年齢効果の差異が小さい

08トップリーグ選手 競技開始年齢別月別出生数表

【考察】
 サッカーは、子ども達の身体的な育成を優先させ過ぎ、個人の成長差が大きい時期に、精神的に影響を与える大会ガイドライン・育成システムに過多しているため、身体的・精神的に素質のある選手を、ほとんどJリーグに上げる事ができない。日本サッカーの強化には、身体的に成長差が大きい年代に精神的な影響を与えない大会ガイドライン・育成システムへの改革が必要だ
 ラグビーは、中学生以降に競技開始した選手が、トップリーグの6割以上を占める。ラグビー以外の、競技スポーツ選手の多くは、競技人口が中学生以降に数十倍に増加しても、小学生から競技開始した選手が、トップ選手になる。日本ラグビーの強化には、子どもの累進的な成長に符合した大会ガイドライン・育成システムへの改革が急務だ