○木内 誠(順天堂大学大学院) 廣津信義(順天堂大学大学院)
鷲谷浩輔(千葉商科大学)
キーワード:7人制ラグビー、日本代表、タックル
【目的】
7人制ラグビー(以下、7人制)がリオデジャネイロオリンピックより正式種目として導入されたことで、わが国においてもオリンピックでのメダル獲得を目指し強化を進めている。現在の日本代表はオリンピックへの出場権を獲得しているものの、日本代表の世界ランキングや強豪国との対戦結果からオリンピックでのメダル獲得は難しい状況である。その要因として失点の多さが関係していると考えられる。7人制は1回のタックルミスがトライにつながる可能性が高いことから、失点を減少させるためにはタックルの強化が必要になる。そこで本研究は7人制日本代表と世界ランキング上位国のタックルについて比較し、日本代表のタックルの現状を明らかにし、タックルの指導方法とトレーニング開発に新たな知見を提供することを目的とする。
【方法】
本研究は、HSBC Sevens World Seriesで行われた日本代表と世界ランキング上位国の試合、31試合を対象とした。
- タックル数
- タックルの部位(肩、胸、腕、手)
- タックル人数(単独、複数)
- キャリアの状態(倒れる、立たれる、エラー)
- タックラーの状態(倒れる、立ち、NOバインド)
- タックル後の行動(寝たまま、ボールへ働きかける、DFライン形成)
- プレー結果(ブレイクダウン、オフロードパス、ラインブレイク、プレーブレイク)
以上の7項目を分析項目として設定し、ゲーム分析ソフトのゲームブレイカー(Sports tec製)を用いて記述的パフォーマンス分析を行った。
【結果】
タックル数の1試合平均は日本代表で20.3回、世界ランキング上位国で19.9回という結果になり有意な差はみられなかった。タックルの部位は各項目間に有意な差はみられなかった。タックルの人数は日本代表が「複数」で有意に高く、「単独」で有意に低い結果(P<0.05)となった。キャリアの状態は日本代表が「立たれる」で有意に高く、「エラー」で有意に低い結果(P<0.05)となった。タックラーの状態は日本代表が「NOバインド」で有意に高く、ボールへ「立ち」で有意に低い結果(P<0.01)となった。タックラーの行動は日本代表が「寝たまま」で有意に高く、「ボールへ働きかける」で有意に低い結果(P<0.01)となった。プレーの結果は日本代表が「タックルブレイク」で有意に高く、「ブレイクダウン」で有意に低い結果(P<0.01)となった。
【考察】
タックルの部位に有意な差がないことから、タックルの入り方については、世界ランキング上位国と相違がないと示唆された。日本代表はタックルの人数において「複数」の値が世界ランキング上位国と比べて高いことと、タックラーの状態で「NOバインド」の値が高いことから、日本代表は単独のタックルでは相手の攻撃を止めることができないことが示唆された。また、キャリアの状態において「立たれる」の値が高いため、世界ランキング上位国のキャリアの自由度が高いく、ボールの継続も止めることができなかったと考えられる。タックル後の行動において「寝たまま」の値が高いことが、プレーの結果において「ブレイクダウン」の値を低くしていると考えられる。