7人制ラグビーのゲーム分析 ―守備の成功と失敗のプレー時間に着目して―

岡西 康法(大阪体育大学大学院) 梅林 薫(大阪体育大学) 石川 昌紀(大阪体育大学)

キーワード:ラグビー,セブンズ,ゲーム分析

【はじめに】
2016年のリオデジャネイロオリンピックにおいて7人制ラグビー(以下 セブンズ)が、男女ともに正式競技として採用され、2020年の東京オリンピック開催も決定し、メダル獲得に向けた強化が急がれる。本研究は、セブンズ男子エリートチームの試合を対象に、ゲーム分析を行い、強豪チームの攻撃と守備の戦術の特徴を明らかにすることを目的とした。

【方法】
IRBワールドセブンズシリーズの2012年ニュージーランドで行われた14試合を対象とし、録画された映像を用いて分析を行った。分析は試合の時間データを、Windows Media Playerのタイムカウンターで計測した。
分析項目は、試合のプレーとプレー以外の時間とプレー時間内の守備時間を計測した。
<試合のプレー時間の分析>
試合のプレー時間は、コンバージョンキックを蹴る時間やペナルティーゴールを狙って成功したときの時間、ボールがグラウンドの外に出てプレーできない時間以外の時間とした。
<守備時間の分析>
 守備時間は、守備の成功時と失敗時、相手チームのミス時の3種類に分類した。守備の成功は、プレーが途切れたときやプレー中に攻撃側のチームから守備側のチームが攻撃権を獲得した場合とし、守備の失敗は、プレーが途切れたときやトライを奪われた場合とした。相手チームのミスは、セットプレーや密集などで守備の影響がない状況において、ノックオンが発生した場合とラインアウトにおいてノットストレートが発生した場合とし、それぞれの守備時間を計測した。
 測定項目は、勝利チームと敗戦チームに分け、平均化し、対応のないt検定を用いて有意差検定を行った。

【結果と考察】
<試合のプレー時間の分析>
 14分間で行われる試合の実際のプレー時間の全平均は、6.4±0.7分であった。
<勝敗別の守備時間の分析>
 守備の成功時間は、17.0±13.0秒であり、勝利チームと敗戦チームの守備時間に有意な差は見られなかった。
守備の失敗時間は、敗戦チームで19.4±14.3秒、勝利チームで16.9±13.4秒となり、勝利チームよりも敗戦チームの守備時間が有意に長い結果となった。

【総括】
本シリーズでは敗戦チームの守備時間が長くなり、自陣に攻め込まれる可能性が高く、失点につながったと考える。守備の回数を減らし、守備の失敗時間を減らす取り組みが、勝利の要因となる可能性がある。

【参考文献】
日比野弘・松元秀雄・山本巧(1998) ラグビーの作戦と戦術 早稲田大学出版部 11-28,83-94.
RUGBY WORLD CUP SEVENS 2009 STATICAL REVIEW MATCH SUMARY

「ラグビークラブにおける運営考察」―大阪のクラブチーム事情を参考事例として―

鈴木道男 (どんぐりラグビークラブ) 

キーワード : クラブチーム、マネジメント、企画

【目的】
1992年日本ラグビー協会登録数がピークを迎え、その後大幅な減少が続いている。  

関西ラグビー協会登録数においても1995年登録数1987チームから2012年は1285チームに減少、702チームが消えており特にスクールや学校クラブ数の変化と比べて、社会人・クラブチーム数減少に歯止めがかからない状況である。(選手数/1チーム約32人前後) ラグビーへの関心を高め、普及、競技人口を増加させ発展させるための組織として、クラブチームの運営は、幅広い年齢層の参加機会提供などたいへん有効な手段である。その実情と経過を把握して、将来の運営について考察する。

【方法】
ラグビー協会の協力を得て、最盛期から現在までの推移を把握、特に減少率が大きいクラブチームの活動低迷と衰退原因、その対策について考える。

【結果・考察】
主にクラブチームの会員構成は、特定の出身関係者のクローズクラブ、いろいろな出身会員で構成するオープンクラブがある。減少の原因としては、①試合グランド数の激減、 1995年に大阪城ラグビー場2面の閉鎖で、年間480試合分のグランドが消滅、代替グランドの確保も十分でなかった。対策⇒自主的なグランド紹介システム「グランド協議会」活動、    ②参加機会の減少 協会主催の大会も厳正な運用になりチーム参加登録のハードルが高くなった。対策⇒自主大会の開催「東大阪トライリーグ」「関西シニアラグビーフェスティバル」、遠征、 ③有能な管理者の減少 経験豊富で熱意あるマネージャー不足、会員募集の行き詰まり、試合アレンジ、ゲーム企画の不備 対策例⇒インターネット環境を利用した情報開示、利用拡大など、④運営会計 資金不足による活動制限を避ける。⇒年会費制(クローズクラブ)、参加費制(オープンクラブ)、効率的な運用で活動費を確保する。⑤協会主導などで、総合的なサポートを行い、合理的なマネジメント運営を浸透させ実施する。

【まとめ】
ラグビークラブ数が減少一途になっており、現状では社会人以降の競技者の参加機会確保が難しい状況である。このまま自律的にクラブ数、競技人口が回復増加することは難しい。 社会人・クラブラグビーが絶滅危惧種に指定される前に、人工的に孵化増殖を促す施策が必要である。日本協会、地域協会レベルで、有効なマーケティングを行い、データを蓄積し、スポーツマネジメントを取り入れた合理的運営、組織的な啓蒙、振興活動が不可欠である。運営の成功モデル例の情報を公開して、それぞれのクラブ運営の企画に生かしていくシステムを構築しなければならない。すでにオリンピック種目となり、2019年ラグビーワールドカップ日本開催に向けて日本国民の注目が集まる機会を、日本ラグビー普及発展の最大のチャンスとしてますますの普及発展、ファン拡大に生かしたい。 

立位姿勢における静的および動的平衡性の分析~ラクビ-スク-ルのこどもを対象として~

灘 英世(関西大学) 新宅 幸憲(びわこ成蹊スポ-ツ大学)
溝畑 潤(関西学院大学) 溝畑 寛治(関西大学)

キ-ワ-ド:立位姿勢 静的 動的 平衡性 ラクビ—スク—ル

【目的】
 近年、姿勢および環境変化が原因の立ち眩みや、若年性腰痛も目立つようになってきた。それらの問題は、将来のこどもの体力や立位姿勢の安定性の欠如に警鐘を鳴らすものである。生活様式の利便性の追求や身体運動の不足によって、立位姿勢が不安定になってきている。立位姿勢は、物理的に不安定要素を含んでおり、その立位姿勢を抗重力筋の活動、各関節の柔軟性などの生体情報を重心動揺に変換することによって、平衡機能や体力として評価されるものと考えられる。それらのことに着目して、定期的にラクビ-スク-ルに通うこどもを対象に、立位姿勢の静的および動的平衡性の分析を試みた。

【対象および方法】
kラクビ-スク-ルの子ども17名(平均年齢 9.3±1.8歳、平均身長 135.1±12.1㎝、平均体重32.9±9.2㎏)、o市立k小学校の子ども17名(平均年齢 9.6±1.8歳、平均身長 135.7±11.6㎝、体重 32.3±9.5㎏)であった。
 立位姿勢における重心動揺測定は、アニマ(株)製重心動揺計ポ-タブルグラビコ-ダ-(GS-7)を用いて、開眼および閉眼にて重心動揺の「総軌跡長」、「単位時間軌跡長」、「単位面積軌跡長」、「外周面積」の4項目を各30秒間行った。動的平衡性の測定については、被験者の前に角度を変えて、3つのカラ-コ-ンを置き、30秒間に46拍のテンポでコ—ンに足部でタッチをさせた。測定項目は、立位姿勢の項目と同様であるが、立位姿勢の項目とは別に「重心平均中心変位MX」、「重心動揺平均変位MY」,「重心平均中心点変位XO」、「重心平均中心点変位YO」の前後動を測定した。運動能力としては、30m走を行った。うつ伏せ体勢から起き上がり、ジグザグに並べられたコ—ンにタッチし、30m走を行わせた。

【結果および考察】
図1は、動的平衡性における重心動揺の中心変位YO(前後動)を示したものである。

図1 動的平衡性の重心中心変位YO(前後動) (**P<0.01)

動的平衡性の前後動において、ラクビ-スク-ルの子どもと同年齢の子どもとの両者間に有意な差(P<0.01)が認められた。これらのことから、ラクビ-フットボ—ルの運動特性である敏捷性、特にステップなどの外乱に対応する動作の連続が体幹機能を高め、足関節を支点としてその周辺の筋力に影響を与えているものと推察された。動的な姿勢制御において前後動を安定させると考えられる内側腓腹筋、およびヒラメ筋の発達が示唆された。 【まとめ】 ラクビ—フットボ—ルをとおした身体運動の継続が、動的平衡性の機能向上に寄与するものと推察された。 参考文献   溝畑 潤(2007) 重心動揺と運動能力の関係について:大学生ラクビ-選手の重心動揺および運動能力の測定結果から スポ-ツ科学・健康科学研究10、15-22

京都産業大学ラグビー部員の体力推移-3年目の検証-

淡路靖弘(京都産業大学ラグビー部) 大西健(京都産業大学)溝畑 潤(関西学院大学)

キーワード:身体組成、筋力、心肺機能

【目的】
ラグビーの競技特性として80分間にわたる豊富な運動量、コンタクト時における接点の強さが勝敗に大きく影響される。この身体的優位を基にチームの戦術も確立されることとなる。近年大学ラグビー界における上位校の選手各人は大型化の傾向が見られ尚且つ様々な局面に対して運動量を落とすことなくチーム戦術を遂行している。本研究は京都産業大学ラグビー部において全国大学選手権ベスト4に進出した当時のレギュラー選手の体力(身体組成、筋力、心肺機能)と
全国大学選手権出場を逃した昨年度のレギュラー選手の体力を比較し差異を検証することとする。

【調査方法】
京都産業大学ラグビー部における全国大学選手権ベスト4のレギュラーメンバー15名と昨年のレギュラーメンバー15名を対象にし以下の項目を比較検証した。
1) 心肺機能
心肺機能の差異の検証には3,000m走のタイムを測定した。
2) 筋力
筋力トレーニングは週5回の朝練習を行いベンチプレス、スクワットの1RMを測定した。
3) 身体組成(体格)
体格の検証として身体組成の計測を行った。身体組成は4月、6月、10月の計3回にわたり各選手の身長、体重、体脂肪率を測定した。
体脂肪率の測定はキャリパー法を用い、2点法にて測定することとした。

【結果と考察】
1) 心肺機能において全国大学選手権ベスト4レギュラー選手が昨年度のレギュラー選手よりもFW, BKともに優れていることが判明した。
2)筋力においては全国大学選手権ベスト4のレギュラーFWが昨年度のレギュラーFW選手よりも圧倒的優位差を示すとともにBKにおいても有意差を示した。
3)身体組成(体格)の比較では体重においてはFWの比較においてフロントローの体格差が顕著である。ルーズヘッドの体重差20kg、ルーズヘッドに至っては30kgの体重差が確認された。一方体脂肪率においてはFW,BKともに有意差は認められなかった。

【まとめ】
心肺機能、筋力、身体組成の3つの項目において全ての面でベスト4メンバーのFW陣の体力差は顕著に有意差を示した。一方BK陣においては心肺機能、筋力の面でベスト4メンバーが有意差を示したが身体組成の面では有意差は認められなかった。京都産業大学ラグビー部はFWの強みを十分に発揮しスクラム、モールで優位に立ちその有意差を前面に押し出した戦いをチームの伝統としている。昨年のレギュラーメンバーの体力は包括的にベスト4メンバーの体力と比較し劣っていたことが考察できる。これを踏まえ今後のチーム作りにおいて体力の底上げが必要不可欠であることがわかる。

総合型地域スポーツクラブにおけるタグラグビー教室の試み

青石哲也(愛知学院大学)、桑田真吾(愛知学院大学大学院)、
菅野昌明(愛知学院大学)、高田正義(愛知学院大学)

キーワード:総合型地域スポーツクラブ、タグラグビー、大学との連携

【目的】
 総合型地域スポーツクラブとは、人々が身近な地域でスポーツを楽しむことが出来る、新しいタイプのスポーツクラブである。文部科学省が提唱する中、現在数多くのスポーツクラブが各地域に設立されている。愛知県日進市でも、平成24年に誕生した。
 その中で、今回はタグラグビー体験会を行った。ラグビー愛好者の底辺拡大と、運動離れしている子供に対してスポーツの楽しさを再発見してもらうことをテーマとした。特に、大学との連携を基に優れた環境と、現役大学生との触れ合い、また体力測定などを同時に実施した。
 本研究は実施報告を兼ね、事後アンケートからどのような傾向があるかを検討することを目的とする。

【手続き】
日   程:平成24年10月13日(土)14:00~
場   所:A大学 ラグビー場
対 象 者:幼児から中学生(15名)
調   査:事後アンケート

【結果と考察】
 参加者の属性は、図1に示した通りである。中学生が4名参加してくれたことで、統制が取り易かった。また、図2に示されているように、参加者は全体的に楽しかったという感想であった。スタッフとして参加した大学生も、高い評価を得ることが出来た(図3参照)。保護者の皆さんの評価も高く、初の試みとしては成功したと考えて良さそうである。



【まとめ】
①実験的に行った「タグラグビー体験会」であっ
たが、予想以上に楽しんでもらえた。
②地域による「スポーツ教育」の在り方の一つとし
て、大学との連携は重要であるといえる。

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