ラグビーフォーラムNo.5

ラグビーフォーラムNo.5(2012年3月発行)
JAPAN RESEARCH JOURNAL OF RUGBY FORUM No.5 (March 2012)


〔原著論文〕

中・高校生ラグビー選手における外傷について

全国ジュニア・全国高等学校ラグビーフットボール大会実行委員会
外山 幸正、新井 達也、中村 夫左央、高折 和男、前田 憲昭・松本 学
〔研究資料〕

白州次郎のスポーツ観(後編)-ラグビー、ブランド化へのヒント-

高木 應光、星野 繁一

東海学生ラグビー連盟における競技力向上に向けた取り組み

寺田 泰人、岡本 昌也、高田 正義

日本聴覚障がい者ラグビー連盟(デフラグビー)に関する活動調査

千葉 英史、長田 耕治、落合 孝幸、柴谷 晋、小中 一輝、速水 徹
〔翻 訳〕
NEW ZEALAND RUGBY UNION PRINCIPLES OF RUGBY COACHING
ラグビーコーチングの原則Ⅴ
榎本 孝二

(氏名:敬称略)

日本ラグビー学会誌 「ラグビーフォーラム」No5
平成24年2月28日 印刷発行 非売品
発行者   日本ラグビー学会 会長     溝畑寛治
編 集   第3回大会委員         灘 英世
発行所   〒564-8680
      大阪府吹田市山手町3-3-35
      関西大学 身体運動文化専修 溝畑寛治気付
      日本ラグビー学会第1回大会事務局
      TEL&FAX T,06-6368-1144 F,06-6368-1268
印刷所   〒550-0002
      大阪市西区江戸堀2-1-13
      あさひ高速印刷株式会社
      TEL:06-6448-7521(代) FAX:06-6371-2303

サッカー・ラグビーの相対的年齢効果による差異について

桑田 大輔(生駒少年ラグビークラブ)

キーワード:相対的年齢効果、子ども、育成システム

【はじめに】
★【FIFA(国際フットボール連盟)創立100周年記念出版 フットボールの歴史】より、『口頭で伝えられているぐらいだったルールが初めて書き留められたのは1846年、パブリックスクールのラグビー校においてであった』『少なくとも1914年まではラグビーが冬のナンバーワンスポーツの地位を確保していた』★【500年前のラグビーから学ぶ、ラグビーの起源、そして日本の進むべき道】より、『1845年、あまり詳細なことには言及せず、概略をまとめたものにすぎないが、ラグビー校式フットボールのルールブックが完成する』とある事から、1845~6年に、初めてフットボール競技規則の原案が、ラグビー校で明文化された。同じ起源のルールから始まった、サッカー・ラグビーの育成システムを常に比較対照してきた。

【目 的】
 子ども達のサッカー・ラグビーの大会ガイドライン、育成システムには、大きな違いがあり、その他にも、日本の男子競技スポーツの多くと、学校教育に、4~6月生まれ(春生まれ)のトップアスリート(生徒)の人数が多く、1~3月生まれ(早生まれ・冬生まれ)に、少ない相対的年齢効果の研究データにも差異があるサッカー・ラグビーの相対的年齢効果による差異を多角的に検証する事で、子ども達が、身体的・精神的に素質に応じた成長を促進するような、育成システム・大会ガイドラインの構築がでると考えた       

【方法】
 サッカー・ラグビー・その他のトップアスリート・各年代の生まれ月を集計し、外国選手を除く・人口動態統計・日数割合も考慮した実数(デモグラフィック変数)に近い月別出生数表を作成する。多数の月別出生数表、各年代のスポーツ競技人口の推移と競技開始年齢・ポジションを調査し参照する

【結果】
サッカーJリーガーの春生まれと早生まれ(9ヶ月の月齢差・成長差)のトップアスリートの割合が、約3:1となる。子ども達の成長差を、約6年と考えると、春生まれの早熟児と晩熟児(72ヶ月の成長差・月齢差)では、24:1となる。更に、春生まれの早熟児と早生まれの晩熟児では、上記の割合から、72:1となる。
 Jリーガーになれる身体的・精神的な素質があるのに、月齢差や成長差によって72倍の差が発生する。これは、Jリーガーが600人いた場合、身体的・精神的に素質があってJリーガーになる可能性のある選手は、20人以下ということだ
 ラグビートップリーガーの生まれ月による年齢別月別出生数表に大きな差異は無く、相対的年齢効果の差異は小さい。ラグビーは、小学生以下の年代から競技開始しても、中学生・高校生から始めても、トップ選手になれる。先天的な要因の割合が多いことで、構成される競技スポーツのために、相対的年齢効果の差異が小さい

08トップリーグ選手 競技開始年齢別月別出生数表

【考察】
 サッカーは、子ども達の身体的な育成を優先させ過ぎ、個人の成長差が大きい時期に、精神的に影響を与える大会ガイドライン・育成システムに過多しているため、身体的・精神的に素質のある選手を、ほとんどJリーグに上げる事ができない。日本サッカーの強化には、身体的に成長差が大きい年代に精神的な影響を与えない大会ガイドライン・育成システムへの改革が必要だ
 ラグビーは、中学生以降に競技開始した選手が、トップリーグの6割以上を占める。ラグビー以外の、競技スポーツ選手の多くは、競技人口が中学生以降に数十倍に増加しても、小学生から競技開始した選手が、トップ選手になる。日本ラグビーの強化には、子どもの累進的な成長に符合した大会ガイドライン・育成システムへの改革が急務だ

ラグビーフォーラムNo.4

ラグビーフォーラムNo.4(2011年3月発行)
JAPAN RESEARCH JOURNAL OF RUGBY FORUM No.4 (March 2011)


〔原著論文〕

ラグビーにおける勝敗とパワーとの関係について

河瀬 泰治、三野 耕

大学ラグビー選手におけるスピードを伴ったパワーの形成的評価に関する事例研究

中井 俊行、石指 宏通、灘 英世、三野 耕

日本の大学ラグビー選手におけるパワーに関する形態学的検討

西脇 満

日本統治時代における朝鮮半島のラグビーについての一考察

西脇 満

中学生ラグビー選手における外傷について

外山 幸正、新井 達也、中村 夫左央、高折 和男、灘 英世
〔研究資料〕

白州次郎のスポーツ観(その1)-ラグビー、ブランド化へのヒント-

高木 應光、星野 繁一

私の知っている楕円球 -勇気、情熱、忍耐-

木下 憲彰
〔書 評〕
Greg RYAN (ed),Tackling Rugby Myths: Rugby and New Zealand Society 1854-2004.
University of Otago Press,2005.
森 仁志
〔翻 訳〕
NEW ZEALAND RUGBY UNION PRINCIPLES OF RUGBY COACHING
ラグビーコーチングの原則Ⅳ
榎本 孝二

(氏名:敬称略)

日本ラグビー学会誌 「ラグビーフォーラム」No4
平成23年2月28日 印刷発行 非売品
発行者   日本ラグビー学会 会長     溝畑寛治
編 集   第3回大会委員         灘 英世
発行所   〒564-8680
      大阪府吹田市山手町3-3-35
      関西大学 身体運動文化専修 溝畑寛治気付
      日本ラグビー学会第1回大会事務局
      TEL&FAX T,06-6368-1144 F,06-6368-1268
印刷所   〒550-0002
      大阪市西区江戸堀2-1-13
      あさひ高速印刷株式会社
      TEL:06-6448-7521(代) FAX:06-6371-2303

京都産業大学ラグビー部員の体力推移

-2年目の検証-

淡路靖弘(京都産業大学ラグビー部) 大西健(京都産業大学)

キーワード:心肺機能、筋力、身体組成

【目的】
ラグビーフットボール競技において求められる要素は80分間走り続ける走力、相手選手に打ち勝つ接点の強さ及び筋力である。これらの体力が礎となり個人のスキル及びチーム戦術が構築されると考えられる。近年の上位大学の選手は優れた心肺機能、筋力、体格の大きさを有し、チームとして結実し優秀な戦績を収めている。
 本研究は一昨年からの選手の体力の強化を図り、全国大学選手権出場を果たした一昨年のレギュラー選手と昨年全国大学選手権に出場できなかったレギュラー選手の体力の比較を行い差異を検証するものとする。

【調査方法】
京都産業大学ラグビー部における一昨年のレギュラー15名、昨年のレギュラー15名を対象にし以下の項目を調査した。

1) 心肺機能
心肺機能向上のトレーニングではボールを用いてピックアップと呼ばれる京都産業大学ラグビー部独自のランニングメニューを敢行した。トレーニング効果を確認する為に、3000m走のタイムトライアルを実施した。
2) 筋力
筋力トレーニングは週5回の朝練習としてウエイトトレーニングを実施した。
3) 身体組成(体格)
体格の検証として身体組成の計測を行った。身体組成は4月、6月、10月の計3回にわたり各選手の身長、体重、体脂肪率を測定した。体脂肪率の測定はキャリパー法を用い、2点法にて測定することとした。

【結果と考察】
1) 心肺機能において一昨年のレギュラー群が昨年のレギュラー群よりもFW, BKともに優れていることが判明した。
2)筋力の有意差においては顕著な差異はみられなかった。
3)身体組成(体格)の比較では一昨年のレギュラー群が圧倒的に優位さを示している。特にFWの比較においてフロントーローの体格差が顕著である。タイトヘッドの体重差15kg、ルーズヘッドに至っては20kgの体重差が確認された。またセカンドロー、バックローとの比較においても一昨年のレギュラー群の方が有意差を示している。

【まとめ】
心肺機能、筋力、身体組成の3つの項目において全ての面で一昨年のレギュラー群が昨年のレギュラー群よりも優位さを示した。特に身体組成の面で顕著に差異が表れ、FWのサイズの差がチームにおいて大きなマイナス面となったことが言える。京都産業大学ラグビー部はFWの強みを十分に発揮しスクラム、モールで優位に立ちその有意差を前面に押し出した戦いをチームの伝統としており昨年のFWの小粒化はチーム戦略上痛手となったことはいうまでもない。これを教訓とし今年はFWのみならずBK共に他校以上の走力、筋力、体格を持ち合わせたチームを構築する必要があるであろう。

ユーティライゼーションを利用したメンタルコーチング

高田正義(愛知学院大学)

キーワード:メンタルコーチング、実力発揮、ユーティライゼーション

【目的】
 試合直前にメンタルスキルの指導をするという性質上、短期間のメンタルトレーニングをメンタルコーチングという名称でアプローチしてきた。メンタルコーチングで必要とされる要因は、本番における「実力の発揮」であるといえる。選抜チームの持つメンタリティーを生かし(ユーティライゼーション)、選手が持っている本来の力をチームワークとして十分に発揮させる事が目的となろう。
 平成21年に引き続き、日本代表U○○のメンタルコーチングを行なった。今回は、前回の代表選手と比較しながら、今後の方向性を検討する。

【手続き】
日程:平成23年8月19日~21日
場所:A大学
対 象 者:日本代表選手22名

【結果と考察】
メンタルコーチングを始める前と後では、100%の選手が考え方や練習に変化があったと答えている。その内容は、「リラックスが出来た」、「集中できた」、「ノリが良くなった」などであり、プラスのエネルギーが発揮されやすい状態が作られていると言える。
図1 メンタルトレーニングの効果
図1 メンタルトレーニングの効果

図2 役に立ったスキル
図2 役に立ったスキル

役に立ったスキルは、目標設定、リラクゼーション、プラス思考などであった。今回の選手は、リラックスや集中力における効果を感じる傾向が顕著であると言える。

 今回の国際試合は、日本が開催国であった。そういう意味では、リラックスや集中力は維持できると考えられる。しかしながら、実際には緊張感が高く、集中力を欠いていた様な結果となった。前回と比較して今回は、日本協会が求める選手像が抽象的に伝達された印象があった。代表選手として強化する方向性をラグビーのスキルのみならず、精神的スキルでも一貫指導していく必要がありそうである。

【まとめ】
 短期間で実力を発揮させる為に、ユーティライゼーションというテクニックを使いメンタルコーチングを行なった。その結果、以下のことが示唆された。
1.タルコーチングを実施する前後では、100%の選手が考え方や練習に変化があったと認めている。
2.ラックスが出来た」、「集中できた」、「ノリが良くなった」など、プラスのエネルギーが発揮されやすい心理状態が作られている。
3.、ラグビー選手に求められるメンタルスキルは、目標設定、リラクゼーション、プラス思考であった。

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