東海学生ラグビー連盟におけるリーグ再編の効果

-N大学のゲームスタッツ分析結果より-

寺田泰人(名古屋経済大学短期大学部)、岡本昌也(愛知工業大学)、高田正義(愛知学院大学)

キーワード:東海学生ラグビー連盟、リーグ再編、ゲームスタッツ

【目 的】
 東海学生ラグビー連盟では、2009年度リーグ戦よりAリーグをA1、A2のそれぞれ6チームによる2部制とし、同時にプレイオフ制を導入した。このリーグ再編の成果については、第3回、第4回のラグビー学会において、一次リーグ、二次リーグそれぞれにおけるリーグ戦順位の上位チームと下位チームの試合内容に着目し、その得失点差を分析することにより、ゲーム内容(ゲームの質)を検証した。
 その結果、A1、A2リーグともに上位チームと下位チーム間の実力差が縮まっている傾向が見られ、特にA2順位決定リーグではほとんどのゲームが僅差となっており、リーグ改編のきっかけの一つであったAリーグ残留を視野においたチーム戦略は成り立たないことが示された。
 さらにA2-Bリーグ間の入替戦でもBリーグ2位チームが勝利するなど東海学生ラグビーリーグ全体の活性化は着実に進んでいるという実感を持った。
 そこで今回は特定のチームにおける3シーズンのゲーム内容に焦点をあて、ゲーム分析の結果をもとに、あらためてリーグ再編の成果を検証することとした。

【方 法】
N大学の2009年度~2011年度まで3シーズンにおける全試合のゲーム分析を行い、セットプレーにおけるボール獲得率およびタックル数などの統計結果をもとにゲーム内容の評価を試みた。なおN大学の過去3シーズンの戦績は以下のとおりである。

◇2009年度:A2一次リーグ5位(1勝4敗)、二次リーグ(A2順位決定リーグ)4位(0勝3敗)でBリーグへ自動降格。
◇2010年度:Bリーグ1位(7勝0敗)でA2リーグへ自動昇格。
◇2011年度:A2一次リーグ1位(5勝0敗)、二次リーグ(A1-A2入替リーグ)3位でA1リーグへの昇格ならず。

【結 果】
(1) セットプレーにおけるボール獲得率
3シーズンごとのセットプレーでのボール獲得率は以下のとおりである。
スクラム : 2009年度 (89%)、2010年度 (95%)、2011年度(93%)。
ラインアウト : 2009年度 (69%)、2010年度 (88%)、2011年度(84%)

(2) タックル成功率
タックルをその成否により、5段階に分類し評価した。
LevelA : ボールを奪い返した。
LevelB : 攻撃を寸断した。
LevelC : ボールを継続された。(受身のタックル)
LevelD : タックルポイントを完全にはずした。(手負いのタックル)
Miss : タックルできなかった。
※LevelA,LevelBをタックル成功として評価

3シーズンごとのタックル成功率は以下のとおりである。
2009年度 (25%)、2010年度 (50%)、2011年度 (35%)

【まとめ】
 N大学の2009年度~2011年度まで3シーズンにおけるセットプレーでのボール獲得率とタックル成功率には同様の傾向がみられ、これはリーグ戦の対戦成績と明らかに関わりがあることがわかった。学会当日は詳細な統計データをもとにさらに検討を加えた結果を報告する。

7人制ラグビーのゲーム分析

―得点に着目して―

岡西 康法(大阪体育大学大学院)
梅林 薫(大阪体育大学)

キーワード:ラグビー,セブンス,ゲーム分析

Ⅰ.はじめに

2016年のリオデジャネイロオリンピックにおいて7人制ラグビー(以下 セブンス)が、男女ともに正式競技として採用されることが決まり、近年セブンスは日本国内で注目されるようになり、セブンスの大会が開催されるようになってきている。本研究は、男子におけるエリートチームのセブンスの試合を対象とし、ゲーム分析を行い、セブンスの特徴を明らかにし、戦術の確立や必要とされる体力要素等を検討することを目的とした。

Ⅱ.方法

IRBワールドセブンスシリーズの2009年南アフリカで行われた44試合、2010年オーストラリアで行われた44試合を対象とした。Windows Media Playerを用いてゲーム分析を行った。集計した項目は、試合のプレー時間、得点のエリアとトライのパターンである。

<試合のプレー時間>
試合時間は、Windows Media Playerのタイムカウンターを利用し、重要なプレーごとに時間を計測することとした。

<得点エリアの集計>
得点のエリア集計は、フィールドに見立てた集計用紙を作成した。トライとドロップゴールによって得点する直前のプレーがフィールドのどの地点で発生したかをプロットすることとし、自陣と敵陣の各ゾーンで生まれたトライの集計を行った。また、ペナルティーゴールを蹴った地点をプロットすることとした。統計処理は自陣と敵陣で生まれたトライ数にt検定を行い、5%水準を有意とした。

<トライパターン>
トライのパターンは、スペースを利用してランニング主体のトライとコンタクトプレーによってスペースを作りだしてのトライに分類した。4つの予選プールと4つの決勝トーナメントのトライのパターンについて集計した。統計処理は集計したトライパターンにχ2検定を行い、5%水準を有意とした。

 Ⅲ.結果と考察

<試合のプレー時間>
試合中に実際プレーが行われた時間は、前後半ともに約3分間であった。無酸素性エネルギー過程(ATP-CP系および解糖系)が主に求められていると推測される。

<得点エリアの集計>
この大会では、各チームがトライとトライ後のコンバージョンによって得点を獲得した。自陣と敵陣のトライ数を表1に示した。敵陣でチャンスをつくり、多くの得点を獲得している。206トライのうち22Mラインからゴールライン付近のエリアで98トライの起点となっていることから、そのエリア内にボールを運ぶことが得点につながる。その一方で自陣からも全体の約3割トライが生まれていることに注目する必要がある。

<トライパターン>
この大会では、ドロップゴールやペナルティーゴールを狙うプレーはみられなかった。すべての得点は、トライとトライ後のコンバージョンによるものであった。

セブンスの試合で得点するためには、ランニングスキルが得点に大きな影響を与えることが示唆される。

Ⅳ.総括

セブンスはゴールで3点を奪うよりも、トライとコンバージョンによって7点を奪うことを重視している。そのため、セブンス独自のアタックとディフェンスの戦術を考案することが必要である。戦術を効率よく実行するため、プレーヤーは、セブンスに適した専門的なトレーニングを行う必要がある。
表1

日本ラグビー学会第5回大会のご案内

日本ラグビー学会第5回大会を下記のとおり開催いたします。

本学会の特徴を生かした、幅広い視野からのアプローチによる有意義な大会にしたいと考えておりますので、多数の方々の発表とご参加をお願い致します。

一般発表(口頭)、特別講演、シンポジウム、総会等を予定しております。

■期日 平成24年3月25日(日) 10:00~16:00

■会場 関西大学 第2学舎 1号館
 〒564-8680
 大阪府吹田市山手町3-3-35
 TEL 06-6368-1121
 阪急千里線「関大前」下車 徒歩5分

■大会概要
 受 付:第2学舎1号館5階 9:30~13:00
 参加費:会員 1,000円  一般・学生 無料

(1)一般演題発表 10:00~11:00

(2)特別講演 ☆スペシャルトークショー11:10~12:00
「ラグビーを通した国際協力 」-タンザニアでの活動-
  演者:服部 貴紀 氏 (7人制ラグビー19歳以下タンザニア代表チームコーチ)

(3)シンポジウム  13:45~15:30
「大学ラグビーの今後のあり方について」 
 〈コーディネーター〉
  小田 伸午 氏(関西大学 人間健康学部教授)
 〈コメンテーター〉
  河瀬 泰治 氏(摂南大学 ラグビー部監督)
 〈シ ン ポ ジ ス ト〉
  岩出 雅之 氏(帝京大学ラグビー部監督)
  小松 節夫 氏(天理大学ラグビー部監督)

(4)定期総会 12:15~12:30

(5)懇親会:新関西大学会館〈4階〉レストラン「チルコロ」 16:00~


【お問合せ】
日本ラグビー学会第4回大会事務局

〒564-8680
大阪府吹田市山手町3-3-35
関西大学 文学部 身体運動文化専修 溝畑寛治気付
日本ラグビー学会事務局
TEL 06-6368-1121
FAX 06-6368-1268

日本ラグビー学会第4回大会についてのお知らせ(緊急)

会員各位

日本ラグビー学会
会長 溝畑 寛治
理事長 石指 宏通
大会実行委員長 三野 耕

 この度の「東日本大震災」におきまして、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げると共に、お亡くなりになられた方々にはご冥福をお祈り申し上げます。
また、一日も早い復興を願っております。

 さて、3月27日(日)に開催される「日本ラグビー学会第4回大会」は一部予定を変更して開催することとなりました。
なお、会場にて義援金募金活動を行います。現状をご理解いただきご了解くださるようお願い申し上げます。加えて、多くの方々のご参加をお待ちしております。

【変更点】
シンポジウム終了後の「懇親会」は中止とし、講演会・シンポジウムからの意見交換会と致します。

高校ラグビー選手におけるメンタル・コーチングについて

高田正義(愛知学院大学)

キーワード:メンタルコーチング、大会直前、自信の形成

【目的】
第3回日本ラグビー学会において、ラグビー選手におけるメンタルトレーニングの短期的効果について報告をした。その際、介入が短期的であるが故、トレーニングという概念は不適切であると述べた。アプローチとしては、コーチングまたはコンディショニングと考えるべきであろう。精神的エネルギーのコントロール方法や試合前の心理的準備は、経験値が大きく影響するといえる。したがって、試行錯誤によってそのスキルを獲得することが一般的である。しかしながら、目前に試合が差し迫り不測の状態が生じた場合には、科学的なサポートが解決の糸口を与えるものだと考えられる。
本研究は、インターハイ出場チームが大会直前に監督不在となり、4日間のメンタルコーチングを行うことにより、どのように意識が変化したのかを検討するものである。

【手続き】
日   程:平成22年12月25日~28日
場   所:大阪府某ホテル
対 象 者:○○県代表チーム
プログラム:以下参照

  1. 現状分析(自己分析、チーム分析)
  2. メンタルトレーニングの概要説明
  3. 目標設定(結果目標、パフォーマンス目標)
  4. セルフコントロール(呼吸、感情、認知)
  5. リラクゼーション
  6. ルーティン(生活ルーティン、パフォーマンスルーティン、思考ルーティン)
  7. セルフトーク
  8. アファーメーション
  9. コンディショニングチェック(身体、心理)
  10. プラス思考
    など。

【結果と考察】
メンタルコーチングを受ける前と後では、全選手(100%)が考え方や練習に変化があったと答えている。図1に示されているように、「リラックス」、「集中」、「自信」など、集団が積極的に活動する為に有効であると考えられる要因に変化があった。

図1

試合直前であった為、選手は積極的にメンタルコンディショニングに取り組んでいたと考えられる。徐々に、考え方が試合に対してポジティブな方向へと変化していった。今までの努力が正しかったこと、試合で力の全てを出し切ることが浸透していき、自然に「自信」が形成されていった。

【まとめ】
 4日間の短期的メンタルコーチングにおいて、以下のことが示唆された。

  1. 全ての選手が、考え方や練習中の雰囲気に変化があったと回答している。
  2. 「リラックス」、「集中」、「乗り」、「自信」などの要因に影響があった。
  3. 今回のチームは「自信」を形成するプログラムが、有効であった。
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