教員免許状更新講習におけるタグラグビーの実践報告

寺田泰人(名古屋経済大学短期大学部)

キーワード:教員免許状更新講習・タグラグビー・アンケート調査

【目的】
平成19年6月の改正教育職員免許法の成立により、平成21年4月1日から教員免許更新制が導入された。この制度では旧免許状所持者は、修了確認期限前の2年間に、大学などが開設する30時間の免許状更新講習を受講・修了した後、免許管理者に申請して修了確認を受けることが必要とされている。名古屋経済大学では、「教科指導、生徒指導その他教育内容の充実に関する事項(選択領域として18時間以上)」の開設講座の一つとして設定した「体育」の中で「タグラグビー」を内容として取り入れた。タグラグビーは平成21年4月より実施の新学習指導要領・小学校学習指導要領解説「体育」の中で、教科として正式に採用された。今回の講座受講者のほとんどは小学校教諭、幼稚園教諭、保育士である。そこで受講者を対象にタグラグビーに対する感想・意見などを調査することにより、タグラグビー普及の一助となることを目的とした。

【方法】
受講者27名に対して講義終了時にアンケートを配布し、その場で回答をしてもらった。 アンケート回収率は100%である。なお、受講者の内訳は以下のとおりである。職業別では、小学校教諭(6名)、幼稚園教諭(3名)、保育士(16名)、元保育士(1名)、専業主婦(1名)。年齢は、54歳(17名)、44歳(1名)、34歳(9名)。男女比は男性1名、女性26名である。

【結果および考察】
設問ごとの回答結果は以下のとおりである。なおQ5、Q6の自由記述についてはその一部である。

Q1「今回のタグラグビーは、更新講習の内容として相応しかったですか?」
 「とても相応しい」(37%)、「まあまあ相応しい」(56%)と肯定的な回答が93%と大多数であった。

Q2「今回の講習で、タグラグビーというスポーツが理解できましたか?」
 「よく理解できた」(22%)、「まあまあ理解できた」(70%)と参加者の大多数がタグラグビーを理解したという回答であった。

Q3「今回の講習で、タグラグビーというスポーツは楽しい・おもしろいと感じましたか?」
 「とても楽しかった」(52%)、「まあまあ楽しかった」(44%)とほぼ参加者全員がタグラグビーを楽しいと感じてくれた。

Q4「今回の講習の担当者の指導は、適切に行われたと思いますか?」
 「とてもよかった」(85%)、「まあまあよかった」(15%)と大変好意的に受け止めていることが伺える。

Q5「タグラグビーというスポーツに対するお考えなどがあれば、お書きください。(自由記述)」

  •  ラグビーの日本でのワールドカップ開催が10年後に迫っています。少しでもラグビーを多くの市民、子どもたちに広めていくことが重要なのではないでしょうか。(54歳、男性、小学校教諭)
  • ラグビーは小学校においては今まで遠い存在のスポーツだったが、このタグラグビーは楽しくやりながらラグビーを身近なスポーツにしてくれると思う。(54歳、女性、小学校教諭)
  • 保育園の年長くらいになると、ドッジボールやサッカーなど集団ゲームを楽しめるようになるので、その一つとしてタグラグビーも取り入れてみたい。(34歳、女性、保育士)

従来低年齢の子どもたちの教材として取り上げられていないだけに受講者にとっても新鮮な印象を受けたようである。またボールを扱うことと、タグを取るという二つの動作を行うことで子どもの興味だけでなく発達を促すことから肯定的な意見が多い。

Q6「今後、あなたが関わる現場でタグラグビーを子どもたちに実施していく上で、問題点や障害となりそうなことはありませんか?(自由記述)」

  • ドッジボールやハンドベースと比べてルールが複雑なので、中学年(10歳以上の子ども)が対象となると思う。(54歳、男性、小学校教諭)
  • ルールの理解力の個人差が大きく、クラス・学年単位ではなくレベルでグループ分けをしないと取り組みにくいかと感じました。タグを取った、取らないで子ども同士のトラブルが考えられます。(34歳、女性、幼稚園教諭)

対象となる子どもが低年齢になるほど、ルールの理解が難しいという意見が多い。年齢に応じてルールをアレンジする必要がある。また新たに用具を揃えることについて予算上の問題が多く上げられた。

大学ラグビー部による地域貢献活動

-関西大学ラグビー部の実践報告-

山下 陽平 (関西大学大学院)、灘  英世 (関西大学)、溝畑 寛治 (関西大学)

キーワード:ラグビー・地域貢献・実践活動

【目的】
関西大学では、「社会と学会と大学の連携」を機軸とする実践型教育研究環境の創出を目指して研究活動を行なっている。
2001年には、関西大学体育学教室が、人体科学会・大阪府レクリエーション協会・吹田市教育委員会との共催で「社会と大学と学会の連携を求めて」というスローガンのもとに「人体科学会第11回大会」を成功させ、その内容をもとに翌年から『東西いのちの文化フォーラム』を開催し、既に第8回を経ている。この催しの中で「親子ラグビー教室」を例年開催し、「楕円のボールと遊ぼう」をテーマに子ども達に活動の輪を広げている。ここには毎年千里第三小学校の子ども達と近隣の小学生が参加している。また、千里第三小学校では週1回のクラブ活動が実施されており、同校からの要請を受けて関西大学ラグビー部員が指導にあたっている。今回はこれらの地域貢献型実践活動について事例を報告する。

【調査方法と内容】
調査方法は、平成21年6月末日、春期活動終了時に自由記述によるアンケート調査を行った。調査内容については、①ラグビーが楽しかったかどうか。②このクラブ活動を終えてラグビーが好きになったかどうか。③ラグビーを通じて友達が出来たかどうか。④秋期にも参加したいかどうか。等についてである。
春期クラブ活動実施回数10回(今回は新型インフルエンザ等により4回減)。参加者数28名。指導者6名(教員1名、地域ボランティア3名、関西大学ラグビー部員2名)。

【結果と考察】
千里第三小学校では、平成13年から高学年(4~6年生)を対象に週1回の課外教育活動としてスポーツ・文化活動を経験させている。
活動の目的は、①普段経験することのできないスポーツや文化への取り組み。②生徒間のコミュニケーションを深めさせる。③地域社会との交流を図る(この小学校ではクラブ活動の指導にあたるボランティアを地域から募って行っている)等である。
 ラグビークラブは、主に楕円球を使って遊びを中心にボールに慣れることからタグラグビーにまで発展させる練習を行っている。調査の結果①の問については、ほとんどの子どもが楽しかったと答えている。②についてもほとんどの子どもが好きになったと答えている。③では、多くの友達ができたと答えている者がほとんどであり、④では、3分の2の者が参加したいと答えており、3分の1は、他の種目も経験したいと答えている。また、子ども達は、地域ボランティアの方々に大変感謝しており、交流が深められていることが顕著に表れている。

【まとめ】
ラグビーは、人間の身体技法の中で最も多くの技法を駆使して行われる球技であることから危険を伴うため参加者が減少している傾向にある。しかし、今回の調査では、クラブ参加者のほとんどが、ラグビーに興味を示し、継続したいと思っていることがわかった。今後は、これらの子ども達をどのように継続させていくかが問題点であり、大学が担う地域貢献への取り組みの課題でもあることが窺えた。

ラグビー選手のメンタルサポートについて

高田正義(愛知学院大学)

キーワード:メンタルトレーニング、大会直前、チームビルディング
【目的】
メンタルトレーニングは、一般的に長期間の継続的なアプローチをしなければ、その効果はないとされている。しかしながら、国や地域を代表するような選抜チームなどは、短時間でチーム編成を強いられることがある。そのような場合には、長期的なメンタルトレーニングは不可能となることが多い。また、召集されたそのときに初めて、メンバーやスタッフに会う場合もある。代表チームを作っていくうえで、チームの哲学、方針、戦略、戦法なども限られた時間の中で行われる。
本研究は、U○○日本代表チーム(以下、日本代表)が海外遠征試合直前の合宿において、2日間のメンタルトサポートを行うことにより、どのように意識が変化したのかを検討するものである。

【手続き】
日   程:平成21年8月20日~22日
場   所:A大学
対 象 者:日本代表選手22名
プログラム:以下参照

8/20(20:00~21:00)
メンタルトレーニングの概要、自己分析、目標設定、練習日誌、フリートーク

8/21(6:15~6:45)
朝のメンタルコンディショニング
今日の目標の確認(アファーメーション)

8/21(20:00~21:00)
練習日誌、リラクゼーション、集中力、
セルフトーク、ルーティン、フリートーク

8/22(6:15~6:45)
朝のメンタルコンディショニング
今日の目標の確認(アファーメーション)

【結果と考察】
メンタルトレーニングを始める前と後では、95%の選手が考え方や練習に変化があったと答えている。
また、目標設定、リラクゼーション、プラス思考といったメンタルスキルが役に立ったと回答していた。

 
図1 役に立ったメンタルスキル

 国際試合を海外で行う直前の合宿の中で、特にチームビルディングを念頭に置いてサポート行った。日本協会が求める選手像を核とし、代表選手としての自覚、責任、信頼を強調するものとしてプログラムをデザインした。目標設定が高順位にあるのは、そのことが浸透した為であると考えられる。

【まとめ】
僅か2日間のメンタルトレーニングであったが、「ねらい」を明確にしたことにより効果的であった。練習日誌や幾つかのアンケートにより、以下のことが示唆された。

  1. 選抜選手であった為、チームビルディングが効果的であった。
  2. 個人の特徴を把握して、テーマを決めたことが効果的であった。
  3. メンタ ルトレーニングは、集中力、リラックス、やる気などに影響があった。

相対的年齢効果を解消し、強化に繋がる育成システムについて

相対的年齢効果、育成システム、大会ガイドライン

桑田 大輔(生駒少年ラグビークラブ)

【目的】
現在、日本の男子競技スポーツの多くと、学校教育に、4~6月生まれ(春生まれ)のトップアスリートの人数が多く、1~3月生まれ(早生まれ・冬生まれ)に、少ない相対的年齢効果がある。相対的年齢効果は、競技スポーツの育成・強化にとって大きな影響を与える。
例えば、Aスポーツの春生まれと早生まれ(9ヶ月の月齢差)のトップアスリートの割合が、3:1とする。子ども達の成長差を、約6年と考えると、春生まれの早熟児と晩熟児(72ヶ月の月齢差)では、24:1となる。更に、春生まれの早熟児と早生まれの晩熟児では、上記の割合から、72:1となる。
トップアスリートになれる身体的・精神的な素質があるのに、月齢差や成長差によって72倍の差が発生する。これはトップ選手が600人いた場合、身体的・精神的に素質があってトップアスリートになる可能性のある選手は、20人以下ということだ。
身体的・精神的に素質のある子ども達を、育成することが、競技スポーツの強化に繋がる。その為には、相対的年齢効果を解消するような、育成システム・大会ガイドラインの構築が、子ども達の育成年代に必要だと考えた。

【方法】
多角的に子ども達が、身体的・精神的に素質に応じて成長し、競技スポーツの強化に繋げるための方法を検証する。

○スポーツの育成について
旧東ドイツで、1964年より全児童を対象とする統一的な適性診断と選手選抜システム「旧ドイツ民主共和国における適性診断の理論と方法(1)」(綿引勝美ほか)

○教育システムについて
フィンランド教育の変化による子ども達への影響について、OECD(経済開発協力機構)のデータ

○その他
日本ラグビー学会 第1回大会『生まれ月(月齢)による精神的なスポーツ活動への影響』、第2回大会『子どものスポーツ(学校教育)と習熟度別(能力別)編成による影響』、第2回大会『子どものスポーツと育成システムによる影響について』《桑田》

【結果】
☆学校教育の習熟度別(能力別)編成について
▲ 欧米諸国の小学校では成績「上位」「中位」「下位」のどのグループでも有効性はない
▲ 小学校・中学校でも学力格差は拡大し、学校全体の学力向上にはつながらない
▲ エリート教育を行っている国の成績は、エリート教育を行ってない国の成績より下回っている
   (▲佐藤学「習熟度別指導の何が問題か」)

☆スポーツ育成の能力別(習熟度別)編成について
△ 旧ドイツでは、1964より、ドイツ統一まで継続的に、全児童を対象とする統一的な適性診断と選手選抜システムが行われた 旧ドイツ体育大学(現ライプチヒ大学スポーツ科学部)
△ もっとも優れたパフォーマンスを発揮する青少年は、青年期や成人期になっても最高の選手である、ということが期待されるが、それはたいへん稀であるということがわかった
△ 低いレベルにあると判断された子どもがそのまま、低いレベルで推移するわけでもない
△『旧ドイツ民主共和国における適性診断の理論と方法(1)より』綿引勝美ほか

☆日本の学校教育・スポーツの育成
▽ 小学校5年生男子の公立と国立の平均身長差は、0.86cm、中学校2年生では、1.20cm、国立の子ども達の方が高い。
▽文部科学省「平成20年度 全国体力・運動能力、運動習慣結果について」より
ある一定の条件を満たした子ども達を中心としてシステム化され、多くの子ども達にとって非効率なものとなっている。

☆強化に向けた育成システム
○ 高校野球連盟システム
○ バレーボールシステム(ローテーション)
○ ハーフ&ハーフシステム
○ ダイヤモンド30(釣鐘型育成システム)
○ 素質主義(地域・家庭・経済・成長差などに関係なく)
○ お山の大将システム(井の中の蛙システム)

【考察】
日本の教育・スポーツの育成は、子ども達の身体的・精神的な成長より早過ぎるために、相対的年齢効果に代表されるような現象が発生する。そのような環境のもと、日本国内でトップアスリートになったとしても、世界的な観点からの強化には繋がらない。子ども達の累進的な成長に符合した育成システムが必要だ。

東海学生ラグビー連盟における競技力向上に向けた取り組み

岡本昌也(愛知工業大学)、寺田泰人(名古屋経済大学短期大学部)、高田正義(愛知学院大学)
中村 司(名城大学)、篠田雅之(東海学園大学)、村瀬賢治(名古屋経済大学)
中本光彦(中京大学)、小澤良太(愛知学院大学)、青石哲也(名古屋大学大学院)

キーワード:リーグ再編、得点差、プレイオフ制

【目的】
2009年度の第46回全国大学ラグビーフットボール選手権大会は帝京大学が悲願の初優勝を飾った。また準優勝は東海大学で、この両チームによる決勝はどちらが勝利しても初優勝で大学選手権史上9校目の優勝校が誕生するという大会であった。一方、東海学生リーグ加盟校の大学選手権での戦績をみると、出場経歴を有するのは中京大学のみではあるが、1967年度の第4回大会に初出場して以来、1984年度の第21回大会までで12回の出場を果たしている。ところが、それ以降は1995年度の第32回大会、1998年度の第35回大会に出場を果たすにとどまっている。つまりこの10年来、東海学生リーグからは大学選手権に出場校を排出でていないのである。そのような現状にあって、東海学生ラグビー連盟では、リーグ全体の競技力向上を目指し、さまざまな取り組みを行っている。ここではリーグ戦の対戦方式に関わる取り組みについてその成果を検証する。

【方法】
リーグ戦順位の上位チームと下位チームの対戦に着目し、その得点差を分析することにより、ゲーム内容(ゲームの質)を検証する。

【結果】
(1) 2004年度~2008年度
東海学生ラグビーリーグでは、2004年度よりAリーグのチーム数をそれまでの8チームから10チーム編成とした。この目的はリーグ構成チームを多くすることにより試合数を増やし、戦術面および選手層両面におけるレベルアップをAリーグ全体について図ることであった。5シーズンにわたり、このリーグ戦方式を実施したところ、全国地区対抗ラグビーフットボール大会において、2005年度の第56回大会より4シーズン連続して東海学生リーグ加盟チームが優勝するという成果をあげることができた。ちなみに1950年度の第1回大会から第55回大会までに東海リーグ加盟チームの優勝回数は8回である。しかしその一方、リーグ戦上位チームと下位チームの対戦では、得点差が100点を超えるゲームが数多く出現するなど、必ずしも期待通りの結果が得られたものではなかった。

(2) 2009年度
 2009年度からは、ミスマッチを減らし、接戦のゲームをできるだけ多くすることを目的に、前年度のAリーグ上位6チームをA1リーグとし、下位4チームにBリーグの上位2チームを加えた6チームをA2リーグとするAリーグ2部制を採用した。それに加えて、チームのピークパフォーマンスをシーズン終盤に発揮できることを目的として、A1、A2リーグともに6チームによる一次リーグを実施し、その対戦結果によるプレイオフ制(各4チームによるリーグ戦)を導入した。そしてプレイオフの結果により、全国大学選手権大会および全国地区対抗大学大会への出場校の決定、A1-A2リーグ間の入れ替え、A2-Bリーグ間の入れ替えを決定することとした。その結果、一次リーグでは大きな得点差がついた対戦も多少みられたが、プレイオフでは、大多数のゲームにおいて接戦となり、また最終順位においても一次リーグとは異なる対戦結果になるなど、当初の想定範囲を超える成果がみられた。

【まとめ】

  • Aリーグのチーム数を単に増やすという方法ではリーグ全体にわたるゲームの質を向上させるにはいたらなかった。
  • Aリーグ2部制およびプレイオフ制の導入は、まだ1シーズン実施しただけなので早計に結論を出すことはできないが、ある一定の成果が認められる可能性は否定できない。なお、ゲームの得点差などの詳細なデータについては、学会大会当日資料をもとに解説する。
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