日本ラグビー学会Supplement原稿記載要項

提出された原稿をそのまま縮小してA4版1ページにオフセット印刷します。
訂正箇所のないよう下記要領に従って作成してください。

1.原稿用紙
A4の上質紙(各自でご用意ください)1枚をご使用ください。
上部余白2.5cm、左右余白2.2cm、下部余白2.5cmに設定してください。)

2.文 字
(1)ワープロまたはタイプ印字を原則とします。
(2)原稿は邦文に限りません。

3.演題・氏名
(1)演題は最上段の第1行に記入し、1行内に収まる範囲で文字の大きさを調整してください。副題がある場合は、行を改めて記載してください。
(2)演者氏名と共同研究者氏名は、演題のみの場合には2行空け、副題がある場合は1行空けて記入してください。所属機関は(  )に入れ、氏名の後に記入してください。
演者氏名の前には○印をつけてください。

4.キーワード
1行空けて3~5語程度のキーワード(左詰めで)をご記入ください。

5.本 文
(1)本文はできるだけ、(1)目的、(2)方法、(3)結果と考察、(4)まとめに分けて記載し、枠内で自由にレイアウトしてください。
(2)図表や写真を使用する場合も、必ず本文枠内に収まるように原稿用紙に貼り付けてください。

6.送付要領
(1)厚紙を入れてA4原稿用紙に折り目がつかないようにしてください。
(2)原稿締切日を厳守し、簡易書留便にて送付してください。

7.締切期日
平成22年1月16日(土)消印有効

京都府亀岡市における小学生タグラグビーの取り組み

京都府亀岡市における小学生タグラグビーの取り組み
-ラグビー競技人口・サポーターの拡大-

中川 健志(亀岡市立保津小学校)

キーワード:亀岡市、タグラグビー、小学生

【目 的】

  1. タグラグビーを通して、児童の心身の健全な育成を図る。
  2. 児童の運動やスポーツに親しむ姿勢を育てる。
  3. ラグビーの関心を広げ、ラグビー人口やサポーターの拡大を図る。

【方 法】

  1. 教職員及び学校関係者に小学校での体育授業にタグラグビーの導入を促す。
  2. 亀岡市ラグビーフットボール協会から講師を派遣し、出前授業や教職員への研修を行う。
  3. 市協会主催(亀岡ラグビー祭等)の行事に小学生タグラグビー交流試合を取り入れる。
  4. ラグビー日本代表選手やトップリーグの選手、また市内中学校・高校ラグビー部の選手と交流する。
  5. 協会及び各種団体がを得て主催する小学生のタグラグビー大会(府・市教育委員会後援)に積極的に参加する。
  6. 「亀岡市タグラグビー教室」を組織し、亀岡市内小学生のタグラグビー経験者の増加を図る

【結果と考察】

  1. 過去4年間で小学生約600名以上がタグラグビーを経験。
  2. 中学校ラグビー部の入部者の増加
  3. 小学生の時のタグラグビーの経験者が高校ラグビー部へ入部。
  4. ラグビーへの関心の高まり(府内・近畿圏内有力チームの出現・保護者のラグビーに対する意識の変化)
  5. メディアの関心の高まり(小学生のタグラグビー大会及び交流会への新聞、テレビ取材)
  6. 小学校教職員のタグラグビーに対する意識の変化(小学校教職員が中心の大会運営)

【まとめ】
ラグビーとタグラグビーは、試合形式やプレーの特徴、練習内容などを考えると、まったく別のスポーツととらえることが一般的である。
その理由の一つに、ラグビーではタックルやあたりなどの”コンタクト”がゲームの勝敗を大きく左右し、逆にタグラグビーはコンタクトを禁止しているスポーツであることがあげられる。もちろん、その他にもたくさんの相違点がある。しかし、タグラグビーとラグビーは全く別とは、必ずしも言えない側面もある。それは、小学生の時にタグラグビーを経験した子どもが、ラグビーに関心を持ち、実際に中学校や高校のラグビー部に入部する児童が増えつつあるからである。また、タグラグビーを経験した女子が、テレビで高校や大学ラグビーの試合を熱心に観戦したり、自分の子どもがタグラグビーを始めたきっかけに、その保護者が子どもを連れて、花園ラグビー場に足を運び、トップリーグの試合を観戦したりするなど、タグラグビーからラグビーへの動きが少なからずある。ここで、確認していきたいことは、亀岡市のタグラグビーの取り組みは将来ラガーマンを育てることが最大の目的ではない。そうなることはラグビー関係者として、もちろんうれしいことではある。しかし、亀岡市協会のタグラグビーの取り組みは「タグラグビーを通して運動やスポーツが好きになり、友だちや仲間を大切にする姿勢を育てる子どもを育成する」ことを大きな目的としている。その結果、たくさんの児童が、自然にラグビーというスポーツの楽しさ、競技性、精神などに魅力を感じ、ラグビーの競技人口やサポーターの拡大につながることが望ましいと考える。

「ラグビーの父」クラーク先生 横浜から神戸へ

「ラグビーの父」クラーク先生 横浜から神戸へ

高木應光(神戸外国人居留地研究会)
星野繁一(龍谷大学短期大学部)

キーワード:慶応大学、神戸の墓、京都帝国大学、文武両道、ジェントルマン

【目的】
 異説もあるが、日本ラグビーのスタートは、「1899(㍾32)年の秋、慶応大学に於いてE.B.クラーク先生が、田中銀之助の手助けによって学生たちにラグビーの手解きをした」ことに始まる。これが定説である。
 ところで、彼の墓が神戸・修法ヶ原の外国人墓地にある。横浜に生れたクラークが神戸に至るまで、どのような人生を歩んだのか。また、彼はどのような人物だったのか。「ラグビーの父」クラーク(1874-1934)の足跡を辿った。

【方法】
 クラークが書いた多量の手紙が残されている。中でも、伊津野 直(京都帝国大学・文学部書記)に宛てた手紙は500通にも及ぶという。今回は先行研究の成果を踏まえ、伊津野 直の著した「PROF.CLARKE’S LETTERS Ⅰ~Ⅵ」『ALBION 1934年7月~1935年5月』(京都帝国大学・英文学研究会発行)を主材料にして、クラークの人物像および人生を探ってみた。なお、英文訳は、長谷川芙美子氏の協力を得た。

【結果と考察】(*要点を箇条書きにした)

  • 学歴:横浜のクイーン・ヴィクトリア・パブリック・スクールにて文武両道、
    ケンブリッジ大学コウパス・カレッジでも文武両道、修士。英王立文学協会員。
  • スポーツ歴:ラグビー、クリケット、短距離走、カナディアンカヌー、サイクリングなど
  • 職歴:慶應大学、第一高等学校、東京高等
    師範学校、第三高等学校、京都帝国大学など
  • 転機:1907年(明治40年)右足切断(膝関節リュウマチによる)
  • 関係者:田中銀之助、ラフカディオ・ハーン(帰化:小泉八雲)(⇒服部一三)、厨川白村(⇒香山 蕃)上田 敏(⇒森 鴎外)、夏目漱石、藤代禎輔、矢野峰人、寿岳文章、など
  • 避暑:主として有馬
  • 特筆点:読書狂で博覧強記=「Encyclopedia Britannica Clarke」→ 京大クラーク文庫
  • 性格:バーバリーを着こなしシャイでナイーヴ ⇔ 世話好き、教え好き、義理・人情に厚い:ジョーク、駄洒落、ユーモアーもたっぷり
  • その後のラグビー:プリンス・マッチ(1922)、Y.C.&A.C.定期戦30周年(欠)/関西黒黄会(出)・講義・論文審査:シェークスピア、手作りプリントと教材準備 ⇔ 著作なし、死の遠因・余生の予定:神戸の中山手通3丁目18、聖マリア教会葬、神戸・春日野外国人墓地

【まとめ】
 クラークは、少年~学生時代を通じて文武両道の人。不幸にして右足切断、スポーツを断念。文=学問・教育分野で人生を全うする。人となりは、典型的なヴィクトリア朝ジェントルマン(スポーツマン)で、教育を通してノーブレス・オブリージュを体現した。

子どものスポーツ(学校教育)と習熟度別(能力別)編成による影響

子どものスポーツ(学校教育)と習熟度別(能力別)編成による影響

桑田 大輔(生駒少年ラグビークラブ)

キーワード:習熟度別編成、正規分布、ムーンスパイラル

【はじめに】
子ども達の学校教育とスポーツ育成について、文武両道などの言葉がポピュラーに使われている。実際に学校教育とスポーツ育成には、相乗効果があり、子ども達の発達に比例(文武同道・文武双伸)するとの話を聞き、常に比較対照してきた。

【目的】
 子ども達のスポーツ育成現場では、選抜・飛び級などのレベル別編成を取り入れることが正常として行われている。勿論、レベル別編成での早期育成システムが子ども達、一人ひとりの才能を伸ばす(個の育成)との発行物が多く、現場指導者の多くが実践している。同じ様に子ども達を教育する現場の学校でも、近年、習熟度別(能力別)という習熟度別編成が急激に広がっている
文部科学省のホームページより、「習熟度別(能力別)」検索した、2000年12月22日「教育改革国民会議報告-教育を変える17の提案-(抜粋)」とある。
●「一人ひとりの才能を伸ばし、創造性に富む人間を育成する」
●「一律主義を改め個性を伸ばす教育システムを導入する」
●「習熟度別学習を推進し、学年の枠を超えて特定の教科を学べるシステムの導入を図る」
2003年には、「理解や習熟の程度に応じた指導を実施」している公立小学校74% 公立中学校67%と急激に広がった。学校教育の習熟度別編成とスポーツのレベル別編成は、子ども達の発達にどのような影響を与えるのか調べた。この比較調査により、子ども達の累進的な素質に応じた成長を促進するシステムを、構築できると考えた

【方法】
学校教育については、習熟度別(能力別)編成を取り入れた国々がどのような状況になり、どのように教育改革して、子ども達の学力向上に成功したのか、また、早期選抜される時期の子ども達の生まれ月を集計・分析する
スポーツ育成については、能力別育成システムを採用している競技スポーツのトップアスリートの生まれ月を集計・分析する

【結果】
☆習熟度別(能力別)編成について
▲欧米諸国の小学校では成績「上位」「中位」「下位」のどのグループでも有効性はない
▲小学校・中学校でも学力格差は拡大し、学校全体の学力向上にはつながらない
▲エリート教育を行っている国の成績は、エリート教育を行ってない国の成績より下回っている
(▲佐藤学「習熟度別指導の何が問題か」)
● 子ども達の月別出生数表より、月齢差と学年制による影響で、4~6月生まれ(春生まれ)と1~3月生まれ(早生まれ)では精神的に差異がある
● 能力別編成したクラスの中で正規分布する
☆スポーツの能力別育成について
● 月別出生数表より、子ども達の生まれた日が、学年前半の選手が多く、学年後半の選手は少ない(ムーンスパイラル)
● 学年制以外の区分で育成されている影響で、更に頑張ることができない子ども達が多くなる


 【考察】
 子ども達の育成システムを学校教育・スポーツ育成より多角的に検証した。早期の能力別編成による指導は、頑張ることができない子ども達の割合を増加させ、全体的に強化に繋がらないとのデータが多いのに対して、早期の能力別編成が、子ども達の育成に有効だとの科学的なデータは稀だ
しかし、子ども達のスポーツ育成現場では、指導者(大人)による能力別編成が横行しており、子ども達の動機付けを大きく下げている。競技スポーツの強化に繋がる育成システムの構築が必要だ

日本聴覚障害者ラグビー連盟(デフラグビー)の活動について(2)

日本聴覚障害者ラグビー連盟(デフラグビー)の活動について(2)
-普及・育成活動から-

柴谷  晋(日本聴覚障害者ラグビー連盟)
落合 孝幸(日本聴覚障害者ラグビー連盟)
長田 耕治(日本聴覚障害者ラグビー連盟)
千葉 英史(追手門学院大学・日本聴覚障害者ラグビー連盟)

キーワード:デフラグビー、聴覚障害者、普及・育成

【はじめに】
 日本におけるデフラグビーの取り組みは、1994年「日本聴覚障害者ラグビーを考える会」として発足。1997年「日本聴覚障害者ラグビークラブ」と改名され本格的に活動開始。2004年5月、10周年記念式典を機に「日本聴覚障害者ラグビー連盟」(以下、JDRU)に変更。
昨年の本学会では第1報として、十年の活動の歩みを発表。
今回はこれに加え、2008年度の普及・育成活動とその課題について報告する。

【日本におけるデフラグビーの活動】

  1. 活動目的・内容
    聴覚障害者及びその関係者がラグビー競技に親しみ、競技力向上と同競技の振興と普及を図り、同時に聴覚障害者及びその関係者における生活の質の向上に寄与することを目標とする。
  2. 国際交流
    2002年8月「第1回聴覚障害者(デフ)ラグビー世界選手権」(ニュージーランド)では日本ラグビー協会の支援を受け、デフ日本代表は7人制大会に参加(準優勝)。
    2005年8月には、単独クラブチームとして英国遠征が行われ、イングランド・ウェールズ・スコットランドの各デフ代表と対戦。

【デフラグビーへの参加とコミュニケーション】
両耳平均聴力レベル25dB以上(2002年大会基準)。軽度の聴覚障害者の参加を認めている。選手には手話の使える者と使えない者が混在する。また指導者やサポーターとして参加する健聴者も同様であるため、コミュニケーションの基本は手話である。

【普及・育成活動】
2002年までは世界大会に向けての代表チームの強化がおもな活動であったが、これ以降はデフラグビーの普及と選手育成を重視している。全国の聾学校では、接触のあるスポーツは安全上、避けられ、ラグビーに接する機会は限られている。そこで聾学校等で選手によるデフラグビー教室を開催してきた。
2008年度の活動は以下のとおりである。

  • 3月10日 デフラグビーフェスティバル(東京辰巳の森ラグビー場)15人制親善試合の前に開催(子ども対象)
  • 3月15日 茨城県霞ヶ浦聾学校にて開催(小学生)
  • 5月25日 つくばラグビーフェスティバルにて開催(子ども)
  • 8月9日,10日 筑波技術大学(日本で唯一の聴覚障害者のための高等教育機関)にて開催(大学生と子ども)

【ラグビー教室の内容】
 聾学校は生徒数が少なく、また幼稚部から高校部まであるため、参加者の年齢層は幅広い。小学校低学年向けにはラグビーボールを使った遊びで楽しませ、小学校高学年以降は最後にタッチラグビーができるようにと指導するが、1~2時間の教室ではここまで辿り付くのはなかなか難しい。
遊びの種目は「ボール集め競争」「タグ取り鬼ごっこ」など様々で、指導を繰り返す中で考えてきた。また子どもたちへの説明の際には、紙に書いたり、実演をするなど「見て分かる」コミュニケーションを実践している。

【普及・育成活動の課題】
 参加者には毎回、好評を得ている。特に聴覚障害児は体を思いっきり動かす機会が少ないようで、保護者からは「こんなに楽しそうに遊ぶ顔は初めて見た」と言われることもある。ラグビーの楽しさを覚え、ラグビースクールへと進んで欲しいのだが、1回の教室ではそこまでの動機付けとはならない。また、当教室では周りは同じ聴覚障害児だが、スクールでは健常者ばかりであるため、これが不安になっている面もあるだろう。連盟としてもできるだけ頻繁に開催したいが、労力の面で限度がある。
 最善の解決法は、ラグビースクールの指導者向けの講習会を開くことではないか。これによりスクールの受け入れが容易になれば、聞こえない子がラグビーに親しみ、また聞こえる子が彼らに接する良い機会となると思われる。

【参考図書】
『静かなるホイッスル』(新潮社、柴谷晋著)
活動初期の運営や世界大会での活躍は本書に詳しい

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