日本ラグビー学会誌「ラグビーフォーラム」創刊によせて
日本ラグビー学会
会 長 溝畑寛治
平成19年6月に発足いたしました日本ラグビー学会が、研究紀要として、ここに「ラグビーフォーラム」を創刊することが出来ます事は、われわれ学会関係者にとりまして大きな喜びであります。日本の、いや世界のラグビー発展に向けて創造的な論文や、エッセー、経験談など数多く寄せられ、この紀要が広くラグビー学会の存在を誇示する学会誌となりますことを念願いたしておあります。
永年にわたりアマチュアリズムを堅持し続けてきたラグビーが、オープン化に踏み切った事により、世界のラグビー界は歴史的に大きく一変する状況を招く事になりました。プロ化は勝つことを強いられることにもつながり、競技力の向上、普及育成をはじめ、IT化の促進やメディア対応など、あらゆる環境の変化に適応する能力をもたなければならないし、より高度な技術や迫力あるゲームを観客に見せなければなりません。そのことが原因してかどうかわかりませんが、勝つ事のみに終始する傾向から、ラグビーの持つノーサイドの精神、フェアプレー、スポーツマンシップなど、本来の「ラグビー精神」が失われていくという傾向が見られはじめたことは事実であります。また一方で、近年人間関係のコミュニケーション不足などによる不可解な殺傷事件が相次いで起きています。特に子どもの問題は大人が猛反省をしなければならないし、襟を正さなければなりません。
今や子どもたちを心身の歪みから救うにはスポーツ(特にラグビー)しかないと言っても過言ではないでしょう。この学会では、これらの問題に向けても体育学などの研究者だけでなく開かれた学会として、少年スクールや中学・高校など発育期における各年代層の指導者や、ラグビーファンの方々にも参加をもとめて指導現場での知恵を生かした研究や視点からの意見をいただき、あらゆる方向から情報が発信できるようにしたいと思っています。
また、本学会は日本ラグビーフットボール協会がビジョンとして示されているように「ラグビー競技を誰からも愛され、親しまれ、楽しまれる、人気の高いスポーツにする」ことを目的に、「実践と理論の融合された」競技力の高い、人格的に優れた「人材の育成」と「環境つくり」に向けての再構築を目指しラグビーを通じた人間教育に貢献したいと思っています。そのためにも体育学、教育学、社会学、哲学、心理学、医学等あらゆる分野からのアプローチを視野に入れ、各専門的な学問領域でご活躍の方々から一般ファンの方々まで幅広く参画していただくことにより、ラグビーというスポーツのアイデンティティの確立に、研究という側面から寄与したいと思っています。
今はまだ、組織や諸規則が動き始めたところであります。会員の皆様方の力を結集して内実を立派なものに作り上げていきたいと思っています。ご協力のほどよろしくお願いいたします。