高田正義(愛知学院大学)
キーワード:メンタルコーチングの効果、意識変化、チームの状況
【目的】
メンタルコーチングについては、実践的アプローチを継続し本学会でも報告してきた。それらによると、試合直前の短期間メンタルコーチンには一定の効果があることが示唆されている。しかしながら、選手の「何」が「どのよう」に変化したのかが明確とはなっていない。
そこで、今回は選手が毎日記録する練習日誌の自己評価を指標として捉えることにした。これにより、選手の意識の変化を客観的に評価することができる。また、メンタルコーチングによって、選手が「何」に意識を向け、「どのよう」に変化したのかが予測できると考えた。
本研究は選手の意識変化検討することで、その効果を明らかにすることを目的とする。
【手続き】
日 程:平成2x年8月y日~y+2日まで。
場 所:A大学
対 象 者:日本代表選手U○ 22名
調 査:練習日誌による自己評価
処 理:IBM SPSS StatisticによるWilcoxon
の符号付き順位検定を行った。
【結果と考察】
各項目における正規性の検定を行ったところ、ほとんどの項目で「正規性に従わない」と判断された。したがって、t検定は使えないと判断しWilcoxonの符号付き順位検定を行った。表1には各項目の2日間おける変化率に対する漸近有意確率が記されている。これによると、有意差が検出されたのは心理的(p<.01)、練習内容(p<.05)、チーム状態(p<.001)、食事(p<.01)、練習以外の生活(p<.05)であり、すべての項目において1日目より2日目の方が高い値を示した。
以上ことから、2日間のメンタルコーチングによって、選手意識が向上したことが示唆される。特筆すべき点は、「チーム状態」の項目である。今回の試合直前のメンタルコーチングにおいては、チームビルディングを念頭に置いたアプローチを意図している。その効果が、データの上でも表れていることが推察できる。
【まとめ】
試合直前の短期間メンタルコーチングでは、以下のことが示唆された。
1、 有意差が検出されたのは心理的、練習内容、チーム状態、食事、練習以外の生活であり、すべての項目において1日目より2日目の方が高い値を示した。
2、 メンタルコーチングによって、選手の意識が向上したといえる。
3、 チームの状態の変化率が最も顕著であり、チームビルディンが成功したことが窺える。
表1. Wilcoxon の符号付き順位検定による 各項目の比較 |
|||||
項目 |
日程 |
Z |
漸近有意確率 |
||
1 |
心理的 |
1日目 |
-2.676 |
.007 |
** |
2日目 |
|||||
2 |
身体的 |
1日目 |
-0.635 |
.526 |
|
2日目 |
|||||
3 |
練習内容 |
1日目 |
-2.000 |
.046 |
* |
2日目 |
|||||
4 |
コーチの指導 |
1日目 |
-0.910 |
.363 |
|
2日目 |
|||||
5 |
チームの状態 |
1日目 |
-3.782 |
.000 |
*** |
2日目 |
|||||
6 |
食事 |
1日目 |
-2.758 |
.006 |
** |
2日目 |
|||||
7 |
知的興味 |
1日目 |
-0.637 |
.524 |
|
2日目 |
|||||
8 |
練習以外の生活 |
1日目 |
-2.138 |
.033 |
* |
2日目 |
|||||
*** p<.001 ** p<.01 * p<.05 |