吉田 明(日本大学文理学部人文科学研究所)
櫛 英彦(日本大学大学院文学研究科)
深田 喜八郎(日本大学大学院文学研究科)
高階 曜衣(日本大学大学院文学研究科)
天野 喜一朗(日本大学大学院文学研究科)
キーワード:組織改革、組織運営、組織戦略、自主性
1.目的
いかなる組織においても、継続して良い成績を収めるためには、周囲の変化に沿った組織変革が必要となる。本研究は、社会人ラグビーチームが、チームの低迷から、組織変革により成功した過程を検証し、ラグビーチームの強化に適した組織変革論を検討することを目的とした。
2.方法
対象は、ジャパンラグビートップリーグ上位に位置する、サントリーサンゴリアスとコベルコスティーラーズとした。サンゴリアスとスティーラーズが、チームの低迷から組織変革により再び上位チームへ戻る過程をジョン・P・コッターの「8段階プロセスモデル」に当てはめ、共通の変革過程が存在するか否かを検討した。ジョン・P・コッターの「8段階プロセスモデル」は、①危機意識を高める、②変革のための連帯チームを築く、③ビジョンと戦略を生み出す、④変革のためのビジョンを周知徹底する、⑤自発的な行動を促す、⑥短期的成果を実現する、⑦成果を活かしてさらなる変革を推進する、⑧新しい方法を企業文化に定着させる、という8段階のプロセスから成り立っている。
ジョン・P・コッターは、変革に必須となる条件や、従業員への働きかけ、リーダーの資質や取るべき行動など、各段階における具体的な記述をもとに、変革論を提唱している。
3.結果と考察
両チームとも、監督による選手への働きかけとして、①危機意識を高める、②ビジョンと戦略を生み出す、③変革のためのビジョンを周知徹底する、④自発的な行動を促す、⑤短期的成果を実現する、⑥成果を活かしてさらなる変革を推進する、という6つの共通した過程が存在した。これらの過程の中でもチーム改革には、「自主性の確立」が特に重要であると考えられる。サントリーは徹底した走り込みとサインプレーによる練習を課し、神戸製鋼は監督による自主性を無視した練習を行い、ラグビーの厳しさを伝えた。そして、短期的成果を達成することで、選手たちに向上心が生まれ逆に自主性が確立された。自主性を考慮しない指導は、選手にマイナスの影響を及ぼすように考えられているが、短期的成果を得ることができれば、選手の自主性が確立される手段になると考えられる。例え社会人チームであっても、徹底して管理することが「自主性の確立」には必要であると考えられる。
4.結論
ラグビーチームの変革には6つの共通した過程が存在することを明らかにした。その中でも、“選手の自主性を確立させる”という段階が、変革にとって重要な過程であると考えられる。