西村克美(嵯峨野高校) 星野繁一(龍谷大学) 髙木應光(神戸居留地研究会)
キーワード:ラグビーの精神・歴史・伝統、プライド
1.目的
自らがプレーするラグビーの精神・歴史・伝統を理解し、ラグビーが他種目に比べ明らかにブランドスポーツであることを認識する。その一助とするために調査を行った。
2.調査方法
クイズ形式の調査票(別紙:発表時配布)を作成・配布し、小学校5・6年生69名、中学76名、高校100名、大学生973名、指導者126名から回答を得た(2014・7~11)。調査票の回収後に正解及び解説をプリント・配布し、ラグビーの精神・伝統・歴史についての理解を求めた。
3.結果と考察
(集計結果は別紙:発表時配布)
1「ラグビー」の語源: 語源についてはラグビー校からの由来がよく知られるが、町名・地名に思いが至らなかったようである。正解②「町の名前」と答えた割合は、年齢と共に高い数値を示した。中でも50歳以上の指導者の8割近い数字が目立った。残念なのは大学生で、「分からない・知らない」が最多の24.5%で、しかも正解者の少なさ55.3%も気にかかる。
2「クラブ・部活」のルーツ国:小学生以外では正解②英国、と予測が可能なようで高い正解率(中学71.1~指導者90.5%)を示した。19C前半ラグビー校でアーノルド校長以降、生徒たちが放課後、自主的にフットボール(サッカーではなくラグビーの意)を実施するようになった。これが今日のクラブ・部活のルーツと考えられ、ラグビーがブランドスポーツと言える歴史・伝統である。
3「ラグビーはサッカーから生れた」との間違った言説は、日本協会の失態やマスコミによって今や常識レベルとなっている。①とした不正解者が多く、小・中・高で6~7割、大学生で8割に近い。一方、高校の正解者では府県によって大きな差も見られた(H44.1%⇔K3.1%)。また、髙木・星野による同様の調査(1995年)と比較すると、今回よりも過去の方が、正解者の多い大学もあった(W大) 。この言説は、我われラグビーのいわば出生に関わるものだけに「ラグビーはサッカーから生れた」との誤解は是非とも解きたい。
4「クーベルタンが古代五輪を復活させた動機」:正解③「学園・青春ドラマ」を読んだから。クーベルタンが12歳の時『トム・ブラウンの学校生活』(ラグビー校OB著)を読み感動。やがてフランスの教育制度を英国型に、さらには世界の青少年に五輪を、と壮大な事業へとつながって行ったのだった。だが、④「知らない・分からない」が、いずれでも最多。ほとんど知られていない事実なので、機会あるごとにPRしラグビーのブランド力を示したい。
5「幻のトライ」:②聞いたことがないが7~8割と多数を占める。一方、指導者では5割、中でも50歳以上では逆に7割近くが①聞いたことがあると回答している。ラグビー最大の美談として語り継ぐことが大いに必要であろう。チームの強弱に関わらずフェアープレー、ジェントルマンリーに徹すること。そして、レフリーの判定に敬意を払い素直に従うことが、青少年の人格を成長させる。と同時にラグビーのブランド力アップに必ずや貢献すると考える。
おわりに
多くの大学(全国のトップレベル校)に協力を頂いたお陰で973人もの調査票を回収できた。だが、残念ながらラグビーの精神・歴史・伝統への理解度は低かった。スキルやフィットネス等にのみ時間が割かれているのだろう。これでは他種目と何ら変わるところがなく、自らにプライドを持ったラガーマンは育たない。他種目も認めるラグビーのブランド力(精神・歴史・伝統)をどの様に継承するか。我われ指導者の課題は大きい。